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堀越正男

[No.40]  堀越正男のおすすめ
鬼譚草紙』、『鬼がつくった国・日本
『鬼譚草紙』 夢枕獏著 、天野喜孝画(朝日新聞社)
『鬼がつくった国・日本』 小松和彦、内藤正敏著(光文社文庫)


「何かH(エッチ)な譚をやりたいねえ」と講釈士=夢枕漠は、絵師=天野喜孝と話した、のだそうだ。「やりましょう」「やりましょう」と…、きっと二人でうまい酒を酌み交わしていたのだろう。

こうして生まれた本書には、平安時代の闇を舞台とし、鬼と女(と男も)をテーマに、3篇の怪奇譚がおさめられている。元エロスとバイオレンスの作家、現『陰陽師』ブームの火付け役の作家にとってはお手の物の素材であり、妖艶なイラストや装丁とあいまって、贅沢な一冊となっている。

読み始めて20数年経っていると思う。この永い年月、雑文駄文も含めて、おそらく全てに目を通している、数少ない作家の一人が夢枕獏だ。一時期は、毎月1冊のペースで単行本が出版されていたが、どれも筆圧が高く水準を割ることなく、その書き疲れないエネルギーには感心していたものだ。

売り出され方が“エロスとバイオレンスの作家”だったからか、テーマが、評論家好みの形而上的な精神的葛藤ではなく、形而下的な肉体のぶつかり合いだったからか、それともクールさのかけらもない、ただただ“熱い”小説だからか、文壇的な評価はあまりされていないと思う。出版される本は、とりあえずベストセラーリストの2桁台に顔を出すが、そこまで。これも面白すぎる宿命か?

とにかく面白い。食わず嫌いを言わず、ぜひ夢枕獏を読んでみて欲しい。はまります。

「鬼譚」や肉体物が嫌ならば、山岳小説の傑作「神々の山嶺」を、思弁的小説、特にSFが好きならば「上弦の月を喰べる獅子」をお奨めする。どれもはまります。

その夢枕獏がかってどこかで、「本当は自分だけのものにしていたいのだが…」と前置きして紹介していた種本が『鬼がつくった国・日本』だ。当時早速探し出し、一晩で夢中になって読んだ本だが、書店をブラウジングしていて偶然、何とずいぶん前に文庫化されているのを発見。今度は夢枕獏があとがきまで書いているではないか。うれしさに購入再読。

権力に追われ、正史の“闇”に生きながら、歴史の転換期ではその“負”のエネルギーを発揮してきた者たちを、“鬼”として読み解いた、極めて刺激的な対談本だ。ここ数年、百鬼夜行魑魅魍魎入り乱れて乱作されている、平安から前近代に至るおどろ物語のまさにバイブルといえる本だ。たいていの伝奇小説よりおもしろい。併せ一読をお奨めする。


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