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長尾 正

[No.41]  長尾 正のおすすめ
ブランドなんか、いらない − 搾取で巨大化する大企業の非情
ナオミ・クライン 著(はまの出版)


3400円もするのに、人にあげるために、2冊買ってしまった本です。

市民運動で、大企業に対する派手な抗議行動が、ヨーロッパ、アメリカで大規模に起こっているのをよくテレビで見て、不思議に思っていました。1999年11月に、シアトルで行われた世界貿易機関(WTO)の会議に、なんと5万人もの人が集まって抗議を展開していたのです。同じ資本主義国の日本では、あまり考えられない風景でした。

この本を読んで、その理由がはっきりしました。強力なブランドを持つ多国籍企業は、生活のありとあらゆるところに入り込み、暴力ともいえる力強さで、人の居場所を奪ってきたのです。大学の便器にまでブランドの広告がつけられるのです。ブランドが作り出す、広告漬けに対する反感と怒りが、この運動の底流にはあったのです。

そのエネルギーは、ブランドに対する攻撃で、広告を書き換えてしまうアドバスター(http://www.adbusters.org/home/)という行動や、さらにすすんで、自由な空間を取り戻そうとするリクレームザストリート(http://www.reclaimthestreets.net/)を作り出します。そのプロセスを、著者のナオミ・クラインは、膨大な事実の積み重ねから描写してゆきます。そして、彼女は事態の重大さを予測して、シアトルのWTO会議の前に、ほとんどの人が予想すらしなかった事態が発生すると、マスコミに警告をしたのです。

彼女の描く事実の集積から、日本とは状況が違うことがはっきりとわかります。日本に住んでいると、なぜ大企業の持つブランドの押し付けが、そんな力を引き出すのかとピンとこないでしょう。しかし、多国籍企業がブランド展開するときの凄さが、日本でも少しずつ伝わってきています。リーバのモッヅヘアの、1500万個サンプルを配布が、その兆しともいえるでしょう。

これから、日本でも、食うか食われるかのどぎついブランド戦争がおこり、大企業に対する反感を覚えて、市民運動が起こるのでしょうか?ちょっと違うような気がします。しかし、日本で何が起こっているのか、これから何が起こるかは、誰が解き明かしてくれるのでしょうか? 同じ日本のこの事実を前にしていても、この本を読んでから、自分をとりまく事実や現象について敏感になった気がします。影響力のある本でした。


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