コミュニケーションはキャッチボール

うまくいくキャッチボールの条件

3 相手の聞く能力を高めるように話す

キャッチボールの目的は、それを楽しむことです。相手を息を合わせて、リズミカルに、ぽーんぽーんとボールをやりとりすることです。けっして、技を競い合うことではありません。相手の受け取る技量に合わせて、相手が受け取りやすいボールを投げる。これが重要です。それがキャッチボールが続く条件です。

ところが、現実には、わざわざ専門用語や難解な言い回しを駆使するなどして、ただただ自分のプライドを満足させるためだけにコミュニケーションの場を利用しようとする人がいます。相手を威嚇し黙らせるのが目的なら、それは効果的な方法ですが、コミュニケーションが目的なら、それは失敗です。

どんなに素晴らしいアイディアもコンセプトも、相手に伝わらなければ、ゴミ同然です。コミュニケーションは、相手に伝わってはじめて価値をもちます。

とても相手が受け取れないような悪送球をしておきながら、こんなに言っているのに、なぜわからないんだ! と怒ったところで、相手が受け取れないという事実は変わりません。キャッチボールが続かないという事実は変わりません。

相手が受け取れないのは、あなたの送球が相手に合っていないからです。相手が聞かないとしたら、あなたの話す能力が及ばないからです。話す能力とは、相手の聞く能力を高める能力なのです。

ただし、わたしたちのまわりには、どうしようもなく運動神経が鈍くて、どんなにやさしいボールを投げてもなかなかキャッチできない人もいます。仁王立ちしたままで手が届く範囲のボールしか取らないと決めている頑固者もいます。そういう人とでも、必ず相手の中にすっぽり入っていくようなボールを百発百中投げられる人なら、キャッチボールは可能でしょう。下手同士のテニスのラリーは続かないが、下手な人も相手がコーチならラリーが続くようなものです。でも、もしそうでないとしたら・・・。

つまり、キャッチボールもコミュニケーションも、自分の技量に応じて手に負える人と負えない人がいるということです。すべての人と分かり合えると思うのは、傲慢です。

伊藤守著『コミュニケーションはキャッチボール』(ディスカヴァー刊)より

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