コミュニケーションはキャッチボール

うまくいくキャッチボールの条件

4 相手の話す能力を高めるように聞く

キャッチボールの初心者が腕を上達させるにはどうしますか?

いちばんの方法は、まず場を踏むこと。たくさんキャッチボールをすることでしょう。

その場合、相手はある程度上手な人、スポーツならコーチが理想的です。相手はコントロールのきかないひどい悪球もとにかく受け取ってくれます。そして、受け取りやすいボールをリズムをもって返してくれます。そうやって、まず、キャッチボールの楽しさを体験するのです。これが最初です。

下手なコーチは、形や規則をいろいろと教えようとします。すると、習うほうは、キャッチボールの楽しさを味わう前に、いやになってしまいます。

コミュニケーションも同じです。

「もっと、ちゃんと話しなさい」

と叱咤することではなく、

「それで?」

「もっと聞かせて」

「へえ、そうなんだ。それからどうしたんだ?」

と、上手に聞いてくれる人がいれば、聞かれていることの安心感から、わたしたちは自然にわかりやすく話せるようになっていきます。

キャッチする、すなわち、聞く側の聞く能力が、相手の話す能力を上達させます。

ところで、コミュニケーションにおいては(とくに上司や親、教師などの立場にある人にとっては)、話す能力よりも聞く能力のほうが重要だ、という話をよくしてきましたが、するとたいていこんな困惑の声が返ってきます。

「でも、『思っていることを何でも自由に言ってほしい』と言っても、みんな言わないんですよ。言えないってこともあるけれど、それ以前に、言いたいことが本人にもわかっていないみたいなんです」

実は、「聞く能力」というのは、ただ単に、相手が話しやすい雰囲気をつくって、相手に話させ、それを黙って最後まで受け入れの気持ちをもって聞く、ということだけではなく、相手が話す事柄を発見するような効果的な質問をする能力でもあるのです。

相手が思わず受け取って返してみたくなるようなボールを投げる能力です。相手がキャッチボールを始めたくなるようなボールを投げる能力です。

「聞く能力」とは、相手に話させる能力です。

伊藤守著『コミュニケーションはキャッチボール』(ディスカヴァー刊)より

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