毎週、コミュニケーションラボラトリーの中の Q&A から抜粋してご紹介します。

仕事上で自分より上の人に「こうした方がいいと思いますよ」と言ってあげたい時、相手が気分を悪くしていないか気になります。伊藤さんでしたら、どんな表現をしますか？

相手が自分で感情をコントロールできないだろうと判断した場合は言わないですね。僕は猛獣使いじゃないですから、誰にでも「これは言うべきだ」なんて思わない。やっぱり我が身が大事ですから、どう考えても暴れちゃいそうな人にわざわざ言うことは無いだろうと思います。そういう時「言えなかった自分」という捉え方もありますけども、今はやがて言えるようになるための過程にあると考えれば問題は無いし、言えるようになる時が来るかもしれない。

でもたいていそういった人に物を言っていく方法として使うのは、やっぱり水戸黄門かな。水戸黄門というのは何かというと、あの印籠は権威権力の象徴なわけでしょう？　最後はそれを持って来れば済んじゃうようなところがあるわけじゃないですか。

会話は権威権力にすごく弱い。権力を振りかざされてしまったら、会話なんて一発でバンて消えちゃうんです。会話を交わすというのは、身分とか経歴とか権威とかをみんな脇に置きますよ、という前提があるんです。この中で誰が特に賢いか、なんてやった日には会話にならない。自分が持っているエゴとかプライドを脇に置けないと、会話はやれないんです。逆に言うと、それができれば、あらゆる階層の人と話すことができるようになるんだろうというふうに思います。

よく「要するに馬鹿になればいいのね」なんていうセリフありますけれど、僕あの言葉、むかつくんです。「馬鹿になればいい」「馬鹿になる」なんて言うと、今は賢いつもりでいるわけでしょう？　頭に来ちゃうんだ、そういうの。何様のつもりだろう。「馬鹿に戻る」と、なぜ言えないんだお前は、って感じ。

やっぱりみんなどこか馬鹿に戻らないと会話にならないですね。プライドとかエゴというものを脇に置けないと会話にならない。もし脇に置くことができれば、どこででも、誰とでも、ずーとしゃべっていられるんですよ、きっと。